乳歯列期の受け口(反対咬合)の治療はいつから始めたら良いですか?
乳歯列期(2~6歳)の「受け口」(反対咬合)の治療は、「今は治療はしないで永久歯に生え変わるまで経過をみましょう。」と様子をみている場合が 多くあります。その理由は永久歯が生える時に、反対咬合(受け口)が自然に治ることもあるからという理由もありますが、むしろ低年齢児でも使用することができる装置がなかったり、歯の型を採るなどの治療が困難であるため敬遠されている面もあったります。
しかし、成長期の受け口の患者さんのうち 多くの方が、「早期初期治療」が必要と考えられます。それは、反対咬合(受け口)は上顎の成長を阻害し下顎の成長を促進すると考えられているからです。 成長がすすんで、骨格(顎関係)のゆがみが大きくなる前の乳歯列の時期に、まず逆の噛み合わせを治しておくというのが「早期初期治療」の考え方です。
◆ 乳歯の噛み合せ
赤ちゃんの歯は生後 8~10ヵ月の頃に 前歯から生え始めます。この時期に「受け口」を心配して赤ちゃんをつれて来院されるお母さんがいらっしゃいます。この時期には、まだ奥歯が無く噛み合せが決定してないので、前歯を噛み合せようと、よく下あごを突き出す「受け口」のような噛み方をするからです。奥歯が生えてくるまでは、反対咬合と決めつけることはできません。あまり、心配なさらずに奥歯が生えてくるまで様子を見ましょう。
1歳を過ぎて最初の奥歯の第一乳臼歯(前から4番目)が生えてくると、上あごと下あごの噛み合せができてきますが、まだ安定したものではありません。奥歯を使って食べ物を噛むことを覚えながら、噛み合せも少しずつ安定してきます。
上あごと下あごがしっかり噛み合うのは、2歳過ぎて生えてくるいちばん奥の第二乳臼歯(前から5番目)が噛み合う2歳半~3歳頃になってからです。1歳台で「受け口」の状態であった子どもが、乳臼歯が生えてそろってくるうちに治っていた、という場合もあります。もしも、乳歯列が完成した時点で「受け口」の状態であるようでしたら、詳しい検査の必要があります。一度、歯科で相談してみるといいでしょう。
◆ 乳歯の反対咬合
乳歯の反対咬合は、あごの発育次第では 永久歯に生えかわった時に自然に治ることもあります。しかし、実際には乳歯の反対咬合が自然に治るのは非常に少数です。
・「受け口」の状態になっている 下の前歯が5~6本ある
・逆の噛み合せの噛みこみが深い
・近親者(父母兄弟等)に「受け口」の人がいる
などの場合は、残念ながら、自然に治る可能性は、極めて少ないと考えて良いでしょう。上あごの前方への成長が抑制されそうな場合は、乳歯のうちに噛み合わせを治して(矯正治療して)おいたほうが良い結果になります。そのままにしておくと、咬む機能に問題があるばかりでなく、成長が進んでしまうと骨格的な影響が大きくなってしまう可能性が増えるからです。
◆ 治療時期は?
乳歯列期の反対咬合の治療開始時期は、どのような場合もできるだけ早く治した方がよいでしょう。しかし、実際には年齢的に治療をすることが可能になる3歳からです。3歳半~4才になれば、症状に合ったいろいろな治療法の提案ができます。特に前歯が永久歯に生え変わっても反対咬合の場合には、早期に治療を始める必要があります。
あごの成長の様子や子どもの治療への適応(協力度)などを見ながら、歯科医と相談して、永久歯の生え代わりまでに様子を見るか、積極的に噛み合わせを治すかを決めるといいでしょう。
◆ 反対咬合の治療症例
【症例 4232 】 3歳女児:乳歯列の反対咬合 (噛み合わせ調整・観察)
【 症例1475 】 6歳女児 乳歯列の反対咬合 (切歯斜面版)
【 症例4430 】 6歳女児 右上中切歯の反対咬合 (切歯斜面版・上顎前歯の部分矯正)