◆ 骨粗鬆症(こつそしょうしょう)ってどういう病気?
骨粗鬆症(こつそしょうしょう)とは、『骨の強度の低下により骨折のリスクが高くなる病気』です。特に女性の高齢者の方は、知っていられる人も多いのではないでしょうか?
骨折は、高齢者にとって大きな問題であり、厚生労働省の『国民生活基礎調査』によると要介護の原因として転倒•骨折によるものが全体の9%となっています。これは、要介護の原因 第5位です。ちなみに 第一位は脳卒中(23.3%)、第二位は認知症(14.0%)ですから 転倒•骨折の9%は、要介護の原因としていかに高いかが分かるかと思います。高齢者において、大腿骨骨折 等を起こすと その後自立が困難となることが多いのです。
人の骨は、一生涯 成長していきます。(古くなった骨が吸収されて、新しい骨が作られています)。これは子供だけではなく、高齢者でも同様に骨の成長は行われ、1 年間に約6%の骨が新しい骨に入れ替わっているのです。 これを専門用語で『骨のリモデリング』と言います。ただし、こうしたことは年齢によって違ってきます。骨成長が盛んな 10 代、20 代では骨の再生量は盛ん行われ、20 代を境に減少していきます。高齢になると骨の新生より骨吸収スピードが早いために 結果 として骨が減ってしまうのです。特に女性は閉経を迎えると 骨の新生スピードは遅くなるため、結果として年3%程度の骨量を失うと言われています。もちろんこうした程度には個人差があります。男性にとっても骨粗鬆症(こつそしょうしょう)は問題ですが、女性の方が問題となることが多い病気です。
◆ ビスフォスフォネート剤ってどういう薬?
ビスフォスフォネート剤は、適度な濃度で使用すると骨に高い吸着性があり、強力な骨吸収抑制作用により、骨が減らないようにすることがでる為、骨粗鬆症の治療薬として用いられます。ビスフォスフォネート剤は使用頻度が高く、日欧米では骨粗鬆症治療薬の約60%の割合でビスフォスフォネート剤が用いられています。
また、ビスフォスフォネート剤は、骨転移(乳ガン、肺ガン、前立腺ガン などでみられる) や 病的骨折、脊髄圧迫、高カルシウム血症 などの予防にも使用されています。
また、最近の研究では、骨転移を予防するだけでなく、骨組織におけるガン細胞の容積を減らす効果も報告されています。このようにビスフォスフォネート剤は、骨粗鬆症治療薬以外にも さまざまな治療にも使用されています。
しかし、良いことだけではありません。問題点も起こってきているのです。
◆ ビスフォスフォネート剤の問題点
ビスフォスフォネート剤による治療を受けている、又は、受けた患者さんにおいて、顎骨壊死(がっこつえし)・顎骨骨髄縁(がっこつこつずいえん)をおこしたと報告されています。顎骨壊死(がっこつえし)とは、その名前のとおり 顎の骨が腐って(壊死して)いく病気です。典型的には歯ぐきの部分の骨が露出します。無症状の場合もありますが、感染が起こると、痛み、あごの腫れ、膿が出る、歯のぐらつき、下くちびるのしびれなどの症状がでてきます。
特に、ビスフォスフォネート剤による治療をしている患者さんが、抜歯や顎の骨の手術などの外科治療を行うと傷が治らずに骨がむき出しになり、骨の壊死が起きてしまうことが報告されています。ただし、顎骨壊死(がっこつえし)は、ビスフォスフォネート剤を使用している全ての人に起こるわけではありません。使用方法や 使用期間…等ざまざまな条件によって違ってくることが 少しずつ分かってきています。
ビスフォスフォネート剤は、注射で行う方法と飲み薬として服用する2 つの使用方法があります。この2 つの方法でも顎骨壊死(がっこつえし)の発生頻度が変わってくると言われています。ビスフォスフォネート剤を注射で行う場合、飲み薬で服用する場合と比較すると顎骨壊死(がっこつえし)の発生率は、高いとされています。
また、こうしたビスフォスフォネート剤使用による顎骨壊死(がっこつえし)の発生率は、使用期間が長い場合と使用量が多い場合で高くなることも報告されています。
さらに発生率は、喫煙者で7.4 倍、肥満の方で16.6 倍リスクが高くなるとも報告されています。また、アジア人と欧米人では、アジア人の方が顎骨壊死(がっこつえし)の発生率が高い可能性も示唆されています。
上記のようなデータは、まだ確立されたものではありませんし、現在のところ、なぜ顎骨壊死(がっこつえし)が起こるのかという正確なメカニズムもまだよく分かっていませんが、問題が起こっているのも事実です。
◆ ビスフォスフォネート剤を服用中で、歯の治療が心配な方へ
これからビスフォスフォネート剤による治療を開始する予定がある場合は、顎骨壊死(がっこつえし)の危険を少しでも減らすために、ビスフォスフォネート剤による治療を開始する前に 完全に歯科治療を完了させることが大切です。
状況により、痛みが無くても抜歯が必要な歯があった場合には、ビスフォスフォネート剤による治療前に済ませておく必要があります。また、歯周病 等の問題がある場合には、ビスフォスフォネート剤治療前に徹底して治療をして改善させておくことも重要です。
不適合な義歯(入れ歯)を使用していると粘膜に傷がつき、そこから感染が起こり、顎骨壊死(がっこつえし)を引き起こす可能性があるため、義歯の調整をきちんと行なっておきましょう。
それでは、ビスフォスフォネート剤をすでに使用されている場合はどうすれば良いのでしょうか?ビスフォスフォネート剤が経口服用によるものか注射によるものかにもよって違いますが、ビスフォスフォネート剤の使用期間が3 年未満の場合で、他のリスクが低い場合には、ビスフォスフォネート剤の中断を行わないで歯科治療を行うべきとされています。
ここでのリスクとは、がんの化学療法を行っている方、ステロイド療法を行っている方、放射線療法を行っている方、糖尿病の方、人工透析を受けている方、喫煙者、飲酒、肥満の方、高齢の方、口腔衛生不良の方、骨隆起やその他の外骨症の方…などです。
もし、リスクがあれば改善することを行い、一定期間ビスフォスフォネート剤の中断を行ってから歯科治療を開始した方が安全とされています。
しかし、ビスフォスフォネート剤の使用期間が3 年以上の場合やリスクがある方の場合には、ビスフォスフォネート剤を3 ヶ月以上中断してから処置をする必要性があるとしています。また、処置後も傷の治りが確認できるまで(3 ヶ月程度)使用を中止します。
いずれの場合も、処置前には、処方された医師の先生と緊密に連携をとった上で、ビスフォスフォネート剤とその副作用に関してのご説明と文書提供をおこない治療の計画を立てておりますのでご心配はいりません。
◆ ビスフォスフォネート剤の副作用の早期発見と早期対応のポイント
ここで紹介した副作用は、まれにおこるもので必ず起こるものではありません。ただ、副作用に気づかずに放置していると重症化して健康に影響を及ぼす危険がありますので、早めに「気づいて対処することが大切です。ビスフォスフォネート系薬剤による治療をしていて、「口の中の痛み、特に抜歯後の痛みがなかなか治まらない」、「歯ぐきに白色あるいは灰色の硬いものが出てきた」、「あごが腫れてきた」、「下唇がしびれた感じがする」、「歯がぐらついてきて、自然に抜けた」などの症状が出現した場合は、すみやかに医師、歯科医師に相談してください。
さらに、顎骨壊死は、口の中が不衛生な状態において生じやすいとされています。従って、ビスフォスフォネート系薬剤による治療を受けている患者さんは、定期的に歯科を受診し、歯ぐきの状態のチェックを受け、ブラッシング(口腔清掃)指導、除石(歯石の除去)処置などを受けることが大切です。そして歯ぐきの骨露出の有無を定期的にチェックして、できればX 線診査で確認を受けましょう。義歯(入れ歯)を入れている場合は、義歯(入れ歯)による歯肉の傷がつかないように調整をきちんとおこなっておきましょう。
ビスフォスフォネート系薬剤に関連した病変が生じる部位は、現在のところあごの骨に限られています。ただ、一度発症すると完全に治癒するのは困難です。従って、日頃から予防しておくが極めて大切です。ビスフォスフォネート系薬剤による治療を受けている患者さんに、あごの病変が生じる可能性があること、ならびにその予防法を知っていただき、専門医による積極的、定期的な予防処置を受けられることをおすすめします。
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