ホワイトニングの適応症(ホワイトニングの効果があがるのか?)を考えるうえで最も重要な要素は、変色した原因を正しく診断することです。歯の変色の原因としては、エナメル質表面やエナメル質・象牙質内部に色素が沈着することによる変色や、歯冠の形成期に受けた障害などが考えられ、それらは主に外因性と内因性に分けることができます。
◆ 外因性の歯の変色原因
永久歯の着色の多くは外因性であり、代表的な例はコーヒー、お茶、赤ワイン、タバコなどの嗜好品により変色を起こします。それらの影響で歯は褐色や黄褐色に着色します。
また、口腔内清掃状態が不良の場合、色素産生細菌の影響により歯の色は緑色や黒色を呈するようになります。加えて、歯を治療した金属によっても変色します。銅やアマルガムでは緑色から黒色に、鉄合金や硝酸銀では黒色の変色を来します。
◆ 内因性の歯の変色原因
内因性の歯の変色の原因には、遺伝性疾患、代謝性疾患、歯の障害、化学物質や薬剤の影響などが挙げられます。
1.遺伝性疾患
【エナメル質形成不全症 】
:軽度では、エナメル質表面に多くの小窩や線条が発現し、重度の場合は象牙質が露出して歯は褐色を呈します。
【 象牙質形成不全症 】
:オパール象牙質と呼ばれるグレーや青みがかった褐色を呈します。
【 先天性ポルフィリン症 】
:歯はピンクから赤褐色を呈します
【 低ホスファターゼ血症 】
:エナメル質形成不全により歯は黒褐色を呈する
2.代謝異常疾患
カルシウム代謝が異常となる上皮小体機能亢進症では、歯は黒色を呈し、上皮小体機能低下症では血中カルシウムの低下、リンの上昇により歯は白亜色を呈します。先天性梅毒、外胚葉異形成症では歯は褐色の変色を来します
3.加齢による歯の黄変
加齢とともにエナメル質が薄くなり、また、アパタイト結晶の成熟により エナメル質の透過性が高くなる為、黄ばんだ象牙質の色が透けて、歯冠が黄色く見えるようになります。
4.歯の変色
むし歯や外傷などの さまざまな原因によって、歯髄が障害を起こしたり歯の神経を失ったりすることにより、灰色、黒色などの変色を生じることがあります。これらは血液や歯髄組織の変成産物が象牙細管内に侵入して変色がおこるといわれています
5.内部吸収
外傷による歯髄の出血が原因で歯髄から肉芽組織が増殖し、表面からピンク斑が透けて見えるようになってしまうことがあります。
6.フッ化物
斑状歯はフツ化物の慢性中毒の症状の1つで、飲料水に1ppm以上のフツ化物を含む特定の地域に集中して発生します。エナメル質表面に不透明な白濁した点状、線状などの不定形な白墨状の変色が認められ、高度なものでは実質欠損を伴います。
7.テトラサイクリン歯
歯の形成期にテトラサイクリン系の抗生物質を服用すると、歯に色素沈着が起きることが報告され、ファインマンにより変色の色調と漂白の可能性、予後について分類されています。テトラサイクリンによる歯の変色の多くは、光が当たって外部から見えやすい前歯部や小臼歯部に、左右対称に発現します。
テトラサイクリン変色歯の分類(ファインマン:2000年改)
Ⅰ度:ライトイエロー(ホワイトニングは容易、予後良好)
Ⅱ度:ライトグレー (ホワイトニンクは可能、予後はやや良好)
Ⅲ度:ダークイエロー・ダークグレー(ホワイトニングは困難、予後不良)
Ⅳ度:色に関係なくかなり濃いカラー(ホワイトニングはきわめて困難)
適応症
上記のうち、
3.加齢による歯の黄変
7.テトラサイクリン系薬剤
がホワイトニングの適応症であるといえます。
* 歯に要因がある場合
重度のテトラサイクリン変色歯(表のⅢ度・Ⅳ度)および重度の石灰化不全歯は、適応症ではありません。
* 全身的な要因による禁忌症
過酸化水素の分解酵素であるカタラーゼをもたない無力タラーゼ症の患者さんに、ホワイトニングは禁忌です。
* 妊娠期・授乳期の女性
ホワイトニングそのものが母体に悪影響を及ぼすという報告はありませんが、安全性の根拠がないので避けるべきとされています。
* 未成年
高校生以上からのホワイトニング実施が望ましいでしょう。
* 一部の膠原病の患者さん(光線過敏症やそれを伴う全身性エリテマトーデス)
オフィスホワイトニングは光照射を行うため、オフィスホワイトニングは避けてホームホワイトニングを選択するなど注意が必要です。
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