クラウンレングスニング(歯冠長延長術)について教えてください。
抜歯するしかない状態の歯を残す治療方法 クラウンレングスニング
歯は歯槽骨の中に埋まっています。歯茎の下に歯の割れが及んでてしまったり、虫歯が進んで歯茎の上に出ている歯の部分(歯冠)が ほとんど無くなって、根(歯根)の方まで虫歯が進み、歯茎が覆いかぶさった状態になってしまうと、通常の虫歯治療では歯に土台が作れないため、ほとんどの場合抜歯になります。歯茎の下の状態をそのままにして無理に治療しても、精密な印象採得(型をとること)を行うことができず、適合の良いクラウン(被せ物)が作れなかったり、細菌感染を起こしやすい環境を残したまま治療を完了させることになってしまいます。
無理に被せると、歯肉の炎症が消えません。
適合の良いクラウン(被せ物)を作るのが困難
◆クラウンレングスニングとは
クラウンレングスニングとは歯冠長延長術(しかんちょうえんちょうじゅつ)ともいいます。歯茎や歯槽骨を削る歯周外科の治療領域で、その名の通り歯茎を少し下げて、その下にある虫歯や歯が割れている部分を歯茎の上に出す治療法のことです。 治療困難なむし歯を『抜歯しないようにする治療法』の一つです。
クラウンレングスニング(歯冠長延長術)を行なって、歯茎の下にある虫歯や 歯が割れている場所を 歯茎の上に露出させることにより、虫歯や割れた歯に土台を立てることが 可能になり、精密な印象採得を行ったり、細菌感染を起こしにくい環境を作ったりすることができるようになります。結果として抜歯しないで被せ物を作ることが出来るだけでなく、その歯の予後が良くなる(長持ちする)ことが期待できます。(症例によってはクラウンレングスニングを 行っても助けることができず、抜歯になることがありますので、しっかりした診査、診断が大切です。)
また、歯肉縁下に虫歯や歯の破折がある場合にはクラウンレングスニング(歯冠長延長術)以外にも、エクストルージョンと言って矯正的に歯を引っ張り出す方法もあります。
>>関連ページ:Q&A「エクストルージョンについて」
◆クラウンレングスニングの目的
・抜歯するしかない状態の歯を残す
むし歯や歯が割れている部分の下にある健康な部分を歯肉の上に出ことができれば、抜歯をせずに歯を残すことが可能となる場合があります。
・破折を防ぐフェルールの確保
クラウンを被せたとき、土台として接触する象牙質の部分(フェルール)が大きいほど、歯へのダメージが少なくなります。
・審美性の確保
ガムライン(歯茎の高さ)を修正して歯の長さを揃えたり、形を修正することにより審美性を確保します。
・被せ物がすぐに外れてしまう場合
噛合わせがきつくて極端に歯の高さ(長さ)が短く被せ物が外れやすい場合、クラウンレングスニングして歯の高さを確保します。
・歯周病の改善 (歯周ポケットの除去)
◆クラウンレングスニングの注意点
・ 知覚過敏や根面カリエスの危険
クラウンレングスニングを行なうと歯茎が下がってしまうので、知覚過敏や歯の根が露出して虫歯の危険が高くなります。(被せる処置で改善できます)
・ 審美性の問題
前歯部に対して行った場合には、歯の根が露出し、審美性の問題などが出てくることがあります。(被せる処置で審美性は改善できます)
・治療期間がかかる
歯茎を後退させた後は、数ヶ月かけて徐々に歯茎の位置が落ち着いてきます。十分な期間 歯茎の治りを待って被せる処置を行う必要があります。
◆クラウンレングスニングが困難な場合
歯の状態によっては、クラウンレングスニングをしても残すことはできません。そのような場合は抜歯して、ブリッジや取り外し式義歯、インプラント等で、歯の無い部分に歯を作る治療を行います。
①むし歯が大きくなって健全な歯質が薄く、十分な強度が無い場合
②歯の支えが少なくて、支えきれない場合
③無理に残そうとすると、隣に歯の犠牲が大きくなってしまう場合
④処置により大臼歯の根の股が露出してしまう場合
などのような状態の歯は、抜歯が必要になってしまいます。
症例によって歯の状態、噛み合せの状態は違います。かかりつけの歯医者さんに、実際のお口の中の状態を、しっかりした診査、診断をして頂くようにしましょう。
◆クラウンレングスにングの症例
【 歯茎の高さをそろえる 】
【 症例 0609 】 78歳女性:歯茎下に及ぶむし歯・歯茎の高さをそろえる
【 症例 1770 】 67歳女性:歯茎下に及ぶむし歯・歯茎の高さをそろえる
【 歯茎下に及んだむし歯を抜かずに残す 】
【 症例 3660 】 55歳女性:歯茎下にすすんだ治療困難なむし歯を助ける
【 症例 3193 】36歳男性:歯茎下にすすむ 治療困難なむし歯を抜かずに助ける
【 症例 1654 】54歳男性:歯茎下に及ぶ 治療困難なむし歯を抜かずに助ける