こどもが歯医者を怖がり困っています。
初めて歯医者に行く、今までに歯医者で嫌な思いや怖い思いをしたなど、多くの子供は歯医者に恐怖心を持って、歯医者に行きたがらないものです。そんな子どもたちの治療を成功させるには、保護者のみなさまの協力も必要です。
ここでは、お子様が「歯医者嫌い」にならないためのちょっとしたコツをご紹介しましょう。
1.普段の生活の中で
歯医者が「苦手」「嫌い」という方は、大人でもたくさんいます。そうした苦手なイメージの大半は、お父さんとお母さんの何気ない言動や行動によって植え付けられてしまうことが多いようです。本当は、お父さんとお母さんに歯医者さんを好きになってもらうことが一番の早道なのですが、なかなかすぐには難しいでしょう。少なくともお子さんの前では『何気ない言動や行動』に注意してください。お子さんが歯医者に対して一度苦手なイメージを持ってしまうと、大人になっても歯医者への足が遠のいて、適切なケアがむずかしくなってしまいます。
◆口を開けることに慣れてもらう
子供は、口の中を触られるのを非常に嫌がります。日ごろからお父さんやお母さんがお口の中をのぞいてあげましょう。そしてやさしく仕上げ磨きをしてあげてください。できればご両親だけでなく祖父母の方やご兄弟姉妹など、いろんな方にしてもらうことで自分以外の誰かに口の中をみたり触られることに慣れるようにしてください。
◆歯医者を脅し文句にしない
子供がイタズラをしたり、わがままを言ったときなどに『歯医者に連れて行って注射してもらうよ』などと脅し文句に使っていると、「歯医者=罰」というイメージがすり込まれてしまい、歯医者に対していやなイメージを与えてしまいます。
2.歯医者さんに行く前に
歯医者さんに行くことが決まったら、そのことを子供に知らせて心の準備をさせてあげましょう。3歳位になって、ある程度理解できるようになったら、お子さんに歯医者に行く理由と必要性を教えてあげてください。「虫歯になったから歯医者に行って治さないといけないこと」「虫歯は歯医者の先生でないと治せない。お母さんには治せないこと」「治さないと痛くなること(ムシ歯菌が暴れだす)」などをできるだけわかりやすく説明してあげましょう。怖がったり嫌がったりしているように見えても、お母さんが一生懸命説明すれば、子供なりに理解してくれるものです。こうした準備が、当日のスムーズな治療の助けになります。
◆不意打ちで連れてゆかない
お子様が行きたがらないことを心配して、何の説明もなしに突然連れて行くと、心の準備ができていないお子さんは、身構えてしまい、必要以上に歯医者を怖がるようになってしまいます。通院の前には必ず歯医者へ行くことを伝えてあげてください。
◆ 嘘を言わない
『何もしないよ』や『診るだけだよ』などと安易に言わないようにしましょう。本当に行くだけ・診てもらうだけなら問題はありませんが、子供は信頼しているお母さんから『何もしないよ』『見てもらうだけだよ』といわれてきたのに、結局治療しなければならなくなったときに、子供はだまされたという気持ちになりますし、ますます歯医者行きたがらなくなってしまいます。もしも、「何もしないよ」とか『見てもらうだけだよ』といって連れてきてしまった時には、ひとこと歯医者さんやスタッフに耳打ちしてください。
◆ なるべく子供が機嫌の良い時間に
3歳ぐらいまでのお子様であれば、お昼寝の時間帯をさけて午前中に連れて行く、空腹時などはなるべく避けさけるなどの配慮が必要です。子供の日頃の生活リズムを考えて予約を入れ、時間に余裕を持って出かけるのがよいでしょう。
3.歯科医院では
どんなに説明をしても、やはり当日になると歯科医院に行くのを嫌がる子供は多いものです。そんなときは、かわいそうだからといって治療を先のばしにしないで、約束したことは必ず守るということを示すため、毅然とした態度で連れて行きましょう。このときのお母さんの心得として、次のことがあげられます。
◆お父さん、お母さんがまずリラックス
子どもは常に親御さんのことを観察しています。お父さん、お母さんの心配や緊張は、子供は敏感に感じ取ります。歯科医院に着いたらお父さん、お母さんはあくまでもリラックスしてください。歯の治療なんて全然平気だよという雰囲気で、ニコニコしてゆったり構えることが子供の緊張を和らげるのにも役立ちます。お父さん、お母さんが歯医者を苦手でも、いつもどおりにふるまうように努めてください。
◆「痛くない?」と聞かないで
治療中、治療後子供につい、『痛くなかった?』と声をかけてしまいがちです。子供にとって痛くなかった?は痛いと同じ意味です。治療中は我慢できたのに、これで泣き出してしまう子供もいます。
「痛くなかった?」は禁句です。言わないようにお願いします。
◆治療ができたらきちんとほめてあげましょう。
我慢して治療ができたら、すぐにほめることが大切です。「すごいね」、「お母さんびっくりしちゃったよ」などと、子供の自意識に訴えかける言葉をかけてあげましょう。
◆かわいそうだからと途中で連れて帰らない。
中には診療台に座るなり、大声で泣いたり暴れたりする子もいます。かわいそうだと思って途中で連れて帰ると、治療ができないばかりか、子供に嫌なことは泣けばすむという意識を与えることになってしまいます。
4.治療後は
◆しっかり褒めてあげて
治療後家に帰ったら、家族中でがんばって治療できたことを子供の前で話してしっかり褒めてあげましょう。褒められることで子どもも自信が付き、次回の治療もがんばれるようになります。コツは、ちょっと大げさなくらいにほめること。お子さんはほめられることで歯医者に良い感情を抱くようになり、次回もスムーズに通院できます。もし泣いてしまっても『口が開けられた』『一人でイスに座れた』などどんな小さなことでも褒めてあげるとにつながってくれるでしょう。
◆上手く治療ができなくても叱らないで
逆に診療台に座れなかった、泣き叫んで治療ができなかった場合でも、責めないであげてください。そして子どもの様子をみながら、歯医者さんの雰囲気に慣れるように、家で少し練習をするとよいでしょう。泣き叫んで治療ができなかったなどの子供は、お母さんの膝の上に横になる・アーンとお口を開けさせてみるなどできるようになったらほめるを繰り返しながら、少しずつ練習してみると良いでしょう。
◆次回の予定を必ず教える。
一度できたからといって安心してしまわないで。次回の予約の日も、きちんと教えてあげて下さい。カレンダーなどにしるしをつけて、子供がすぐにわかるようにしてあげるのもよいでしょう。
歯の治療は大人でも怖いもの。子供にしてみれば初めて治療を受けるということは、かなり高いハードルなのです。子供の治療と大人の治療は原則的に一緒です。年齢(精神的成熟度)に応じた治療ができるまで少しずつステップアップをめざします。まずは診療室の雰囲気やスタッフに慣れてもらい、中にスムーズに入ってこれるようになればユニットの上に座ってもらう。それから歯医者さんの道具にちょっとずつ慣れてもらい、簡単に済む治療から行っていく。そして必要な治療まで進めていく。たとえ虫歯を削ってつめる事ができなくても進行止めの薬を塗るだけでもかまいません。できた事を褒めてあげて、通院いただければ自然と一人で椅子に座って治療できるようになります。 治療が嫌で、診療台の上で30分以上もぐずりながらも進行止め薬の塗布しかできないでいたお子様が ある日突然きちんと口を開いて治療をさせてくれるようになることもあります。
こういう風に進めていくと、歯医者さんに恐怖感の強い子ほど、通院する回数がかかり、お母さんは大変ですが、子供さんはスムーズに治療を受けられるようになり、そのことが自信になって成長していくのです。