子どもの虫歯は痛くならない?
歯科検診が行なわれるたびに、毎年乳歯に虫歯があることを知らせる紙をもらって帰ってくると、「毎年治しているはずなのに、どうしてそんなに虫歯になるの!?」とか、「むし歯の痛みを訴えていないし、本当にむし歯なの?」とまでおっしゃるお母さんもいらっしゃいます。それは、乳歯は永久歯と比べると違いがあるからなのです。
乳歯の虫歯には二つの大きな特徴があります。
むし歯になりやすく、進みが速い
一般的に大人の歯は、小さなむし歯ができてそれが進んで痛み出すまでには何年もかかります。しかし乳歯の場合は、むし歯の進み方が早く数ヶ月で神経まで進んでしまうことがあります。それは、永久歯と比べて、歯の表面の硬さが半分程度と柔らかく、耐酸性が弱いため、むし歯になりやすいのです。小さいむし歯もすぐに大きなむし歯に進んでしまいます。さらにもともと歯が小さいこともあり、むし歯が、短期間で歯の内部の神経にまで及んでしまうこともあります。むし歯治療をした後でも、詰めものの周囲が再び虫歯になってしまうこともよくあります。また、永久歯と比較して、同時に何本も虫歯になってしまいやすい。さらに左右対称に虫歯になっているようなこともよくあります。
「この前の検診では『虫歯なし』といわれたのに!」とお母さんがびっくりすることもこういった理由からなのです。
自覚症状が不明確(痛みが出にくい)
むし歯が深くなると水や食べ物が歯にしみるようになります。ところが、永久歯であれば、痛く感じるほどの深い虫歯でも、乳歯はそれを訴えることが少ないのです。「歯医者がいやだからうそをついている」のではありません。そのうちに虫歯はどんどん進んで神経が死んでしまいます。神経が死ぬときは強い痛みを伴いますから、さすがに子供は「痛い」と訴えます。(たいした痛みも出ないで神経が死んでしまうこともありますから注意が必要です)歯が痛くなったことのある方はご存知でしょうが、ズキンズキンするのです。大人の場合はこの痛みが何日も何回も続きますが、子供の歯は一晩で神経が死んでしまいます。死んでしまえばもう痛みを感じませんから次の朝、子供は「もう治った」と親に報告します。それを信じていると大変です。死んだ神経の中で、ばい菌が繁殖して膿をためます。大切な永久歯が育っているあごの骨に膿が溜まってしまうのです。生え変わりの永久歯や 歯並びに悪い影響を及ぼします。そして、神経の死んだ乳歯は脆くなります。ただでさえ柔らかく薄い乳歯は、ちょっと硬いものをかむだけでぼろぼろと欠けてゆき、気が付いたときには、歯の頭がすっかり無くなっていたりすることもあるのです。
乳歯は永久歯と比べると、虫歯に対して抵抗性が弱いといえます。そのため一度治療したからといって安心は出来ません。またすぐに虫歯になってしまう可能性が あるのです。お母さんが、毎日、お子さんの口の中をしっかり見て歯磨きをすることは、虫歯を早く発見するためにも、とても大事なのです。 定期的に歯医者さんでもむし歯チェックを受けることも大切です。