よく噛む食事をするとどんな良いことがありますか？
現代人は、食事にかける時間が減ってしまったこと、軟らかい食べ物を好むようになったことなどから、噛む回数が激減しています。女王・卑弥呼の時代（弥生時代）の人びとは、1回の食事に約4000回も噛んでいたといわれています。それが江戸時代には半分以下になり、戦後50年間でさらに大幅に減少、現代人が1回の食事で噛む回数は、約600回といわれています。
その結果、しっかりよく噛むことを忘れた現代人は、医療の発達のおかげで「長生きにはなったが不健康な人も数多くいる」という、あまり喜べない状況になってしまったともいわれています。
それでは、咀嚼の大切さ、健康に及ぼすよい影響について、考えてみましょう。
(1)唾液がよく出るようになる
食べ物が口の中に入りよくかむと、筋肉の働きとともに唾液の分泌が活発になります。これは、食べ物を飲み込みやすくするという唾液の大切な働きです。その他の唾液のはたらきは、
◇ 食べ物の消化・吸収が良くなる
消化酵素のアミラーゼを含む唾液を分泌し、胃腸での食べ物の吸収を促進します。よく噛まないと、消化器官に余分な負担がかかり、消化不良を起こすことがあります。
◇ むし歯・歯周病予防
唾液は、歯や粘膜の汚れや菌を洗い流すとともに、唾液に含まれる免疫物質が細菌を減少させるため、口腔内の清潔が保たれ、むし歯や歯周病の予防につながります。
◇ アレルギーや発がん性物質などを抑える
などがあります。 しっかり噛むことで唾液がたくさん出てくると、栄養の吸収を促して体の成長を助け、虫歯も予防します。そして虫歯がないことでさらによく噛めるようになります。
(2)筋肉がよく働いて、よい顔になる
口の周りの噛む筋肉は「目」や「頬」の筋肉とつながっています。しっかり噛んで口を動かすことによって、顔の筋肉が発達して「よい顔」へと導かれます。
・ 口がポカンと開いている
・ 頬の緊張が弱くだらんとしている
・ 目が垂れている
・ 食べ物が口からこぼれる
・ 風船を膨らませられない
・ ろうそくの火が消せない
このような症状が当てはまる場合は顔の筋肉がしっかり発達していない可能性があります。しっかり噛んで顔の筋肉を発達させる必要があります。
(3)脳へ刺激する 脳の機能の活性化する
よくかむことにより以下の効果がみられます。
◇ 記憶や集中力を高める
味や、食感などを感じたり、噛むという作業により骨や筋肉が動き、血液の循環がよくなることで脳神経が刺激され、脳の働きが活発になり、脳の機能を高めます。
◇ 肥満防止
食事に時間をかけることにより、満腹感が得られ、食べ過ぎによる肥満防止の効果もあります。また、脳を活性化することで脂肪の分解や代謝を促進します。
◇ ストレス解消
早食いをせず、ゆったりと時間をかけて楽しく食事をするということは、緊張をほぐし精神を安定させ、ストレス解消にもなります。脳波を調べると、噛むことでリラックス作用を表す「α波の増加とβ波の減少」も認められます。
(4)骨の成長をうながす 歯並びがよくなる
◇ 骨の成長
噛む筋肉が働くと、血のめぐりがよくなり骨に栄養と刺激を送ります。また、噛むことによって噛む刺激が歯の根を通して顎の骨に直接伝わります。その刺激で顎が成長するのです。６才までに顔面の骨の約80%が成長します。そのほとんどが頭と上顎です。残りの部分は10才から下顎を中心に成長します。女子は14才、男子は17才くらいまで成長は続きます。
よってこの成長時期に良く噛む事によって、骨に栄養と発育刺激を与えることが大切です。
◇ 骨が成長すると・・・歯並びがよくなる
前歯が乳歯から永久歯に生え換わる、小学校低学年時期に、よく噛んで食事をすると、顎の骨の成長が促がされて歯の並ぶスペースが出来ます。スペースがあることと頬や舌の筋肉の働きで歯は自然に並んできます。歯並びがよくなることでさらによく噛むことができ、筋肉も骨も成長します。よく噛んで食事をしないと、顎（あご）の成長が悪くなり、前歯が重なり合い、叢生（そうせい）となり、歯並びが悪くなります。また、矯正治療をしても、よく噛んで食べる習慣に変えていかないと、一旦、歯がきちんと並んでも、また、元の位置に歯が戻ってしまう（後戻り現象といいます）ことが多いです。
また、食べ物を良く噛んでいると、歯に適度な力が加わり、歯も噛む力を垂直方向できちんと受け止めなくてはならないため、まっすぐにきれいに並ぶのです。
このように、健康な歯で食べ物をしっかり噛んで味わうことは、全身の健康維持に大きな効果があります。「よく噛んで食べる」健康効果を見直してみましょう。
