下顎の内側にできた硬い膨らみを「下顎隆起」といわれました。
◆下顎隆起とは
下顎骨の小臼歯部の舌側の骨の表面が、限局的で境がはっきりと半球状に盛り上がる症状です。骨が過剰に発育した外骨症の一つです。聞き慣れない病名かもしれませんが、決して珍しいものではありません。非腫瘍性に骨が増殖したものですから、心配する必要はありません。
下顎隆起
>>関連ページ:Q&A「歯茎にできた骨の膨らみを「外骨症」といわれました。」
>>関連ページ:Q&A「上顎にできた硬い膨らみを 口蓋隆起といわれました。」
◆下顎隆起の症状
男性よりも女性に多く見られます。年齢的には幼少期に認められることはほとんど無く、年をとるにつれて出現してきます。隆起が著明になってくるのは40歳以降といわれています。
口蓋隆起と同様に下顎隆起も痛みや違和感などの感覚の異常が現れる事もなく、少しずつ大きくなってゆくため、歯科医受診時に偶然指摘されることが多いです。下顎隆起の表面は正常粘膜で覆われていますが他部位より粘膜が薄くなっているため、大きくなってお口の中に突出してくると歯ブラシや硬い食べ物が当たって傷がついて痛むようになったり、口内炎ができるようになったります。また、話したりするのに支障が出ることもあります。このようなことから、自覚症状がないまま少しずつ大きくなるので、 大きくなってから ある日突然気が付いて驚いて来院される方もいらっしゃいます。
◆発生原因は
非腫瘍性の良性骨増殖と考えられています。はっきりとした発症の原因は、分かっていません。遺伝的要因とも、歯ぎしりや強い咬み合わせが歯を介して伝わる顎骨へのストレスによる骨増殖とも言われています。
◆検査と診断
視診や触診でほとんど診断できますが、画像診断で確定します。
下顎骨の小臼歯部の舌側にみられます。境界のはっきりしている半球状に盛り上がった骨の隆起です。多くの場合は両側性で、大小数個みられることもあります。 骨の隆起(盛り上がり)であるため、エックス線フィルム上に不透過像として認められます。触ると骨の硬さで有ることが重要で、粘膜が傷つかない限り痛み等の自覚症状はありません。
隆起がやわらかい物や、短期間で大きさ等の変化が有る場合、表面の粘膜に潰瘍を生じている物は、下顎隆起でない場合が多いですので、一度歯医者さんを受診して診察を受けて下さい。
◆治療の方法
骨が部分的に膨らんだだけなので、日常生活に支障がなければ特に何もする必要はありません。しばらくは経過を観察します。被覆粘膜が薄いので、硬い食物の接触刺激で痛みや潰瘍を認めることも少なくありません。潰瘍を生じて痛みがあるときには、口内炎の塗り薬が有効です。義歯(ぎし)作製時には義歯に痛みが 出ないように床下に緩衝腔(かんしょうくう)をつくります。隆起が大きくて義歯を設計するうえで邪魔になる場合や発音に障害が出る、歯磨きがしにくくなり むし歯や歯周病のリスクが高い場合など、外科的に削除することを検討することがあります。手術は隆起が小さければ局所麻酔で行います。ご心配でしたら一 度、ご相談されると良いでしょう。
【 症例 4498 】 62歳 男性 : 下顎隆起 経過観察
【 症例 1770 】 59歳 女性 : 下顎隆起 経過観察