永久歯が埋まったまま生えてこない「埋伏歯」と言われました。どうしたらよいでしょう?
乳歯は上顎下顎10本ずつ、合計20本生えてきます。小学校に入学する6歳頃には乳歯の奥歯の後ろに6歳臼歯が生えてきます。また、乳歯の前歯がだんだんグラグラ揺れてきます。それは、生え変わりの永久歯が、乳歯の根っこを溶かしながら生えてきているのです。
通常は乳歯が抜け落ちるとすぐ下に永久歯の頭が見えてきますが、時には乳歯が抜けても永久歯が生えてこないこともあります。
乳歯が抜けても永久歯が生えてこない原因はいくつか考えられますが、その中のひとつとして、永久歯はあっても何らかの原因で生えてこられずに埋まったままになっている状態になっている場合があります。
◆埋伏歯(まいふくし)とは
このように、生えてくるはずの永久歯が 歯ぐきや顎の骨に埋まったまま 生えてこない歯のことを「埋伏歯」と言います。犬歯(前から3番目の永久歯)に、顎の中に埋まったまま生えてこないこと比較的多くみられます。
7歳女児:右上の中切歯が埋まったまま生えてきません
◆埋伏歯の原因
* 歯が生えるスペースが足りない
* 歯が生える方向に問題がある
* 歯と骨が癒着している
顎が小さい、乳歯が早く抜けてしまう、逆に乳歯がいつまでも 抜けずに残ってしまう、そのほか 乳歯のむし歯、外傷など、さまざまな原因によっておこると考えられます。
◆埋伏歯による問題は
放置することで、その歯が生えてこないといった問題だけでなく、埋伏歯によって、ほかの健康な永久歯の根っこが傷つけられたり、永久歯の成長が妨げられたりと悪影響を及ぼしたり、顎の骨とくっついてしまったりと 大きな問題を引き起こすことがあります。また、歯が生えてこないまま放っておくことにより、その歯が本来生える場所の両隣の歯が倒れこみ、生えてくる場所がなくなったり、かみ合わせが悪くなったりします。
【症例】埋伏犬歯による歯並びの悪化 <<クリック
◆埋伏歯の治療方法
永久歯が出てこない患者さんは 時々いらっしゃいます。その中でも 「いずれ出てくるだろう?」と待ち続けて成人になってしまう方も多いでようです。もし埋まって生えてこない永久歯に気がついたら、しばらく経過をみて何の変化もないようであれば早めに手を打つ必要があります。
スペースが足りなくて歯が生えてこないときは、乳歯を少し削ったり矯正装置でスペースを拡げたりすることで自然と生えてくるようになります。
隙間を作っても歯が生えてこないときや、歯の生える向きに問題がある場合は、埋まっている歯を矯正力でお口の中に引っ張り出してきれいにならべる必要があります。埋まっている歯の頭にボタンを付けて、ばねやゴムの力で歯を適切な方向に引っ張ります。また、歯と骨の間には歯根膜という組織があるのですが、外傷や慢性炎症によって歯と骨が直接くっついてしまうことがあります。こうなると歯は自然に生えてこないばかりでなく、引っ張っても動きません。このような場合は、抜歯せざるを得ないこともあります。
◆埋伏歯の治療症例
【 症例 4102 】 女児:前歯が生えてこない〔右上中切歯の埋伏〕 矯正治療中
【 症例 2999 】 男性:前歯が生えてこない〔左上中切歯の埋伏〕 矯正治療
【 症例 0727 】 男性:前歯が生えてこない 〔右上中切歯の埋伏〕 矯正治療
小さな子供に外科的な処置を受けさせることに抵抗を感じるかもしれませんが、先に説明しましたように、埋まっている歯を放置すると、隣の歯の根にぶつかって歯の根を吸収してしまう可能性があります。こうなると もう元に戻ることはありませんから、せっかく生えている永久歯の寿命が短くなってしまいます。このように、永久歯が埋まってしまっている場合、その影響が他の歯にも及ぶことがあり、かつ、それはもとの正常な状態に戻すことができなくなってしまうので、早めに処置を行う必要があるのです。埋伏歯は 時期を逃すとひっぱってもうまく出て来ない場合もあります。
「反対側の歯がはえてしばらく経つのに、なかなか永久歯が生えてこない」「永久歯がないのでは?」などといった心配がある場合には、お早めに歯医者さんにご相談することをお勧めします。