歯が抜けた後の治療方法について教えてください。
歯を抜いて痛みがなくなったら、「1本無いけどそれほど不都合なく使える。」と考え、それ以後の歯医者さんの通院をやめてしまう…、抜歯後に部分入れ歯を入れたものの、なかなか馴染めないなどの理由で使用を中断してしまった…。などの状態でそのままにしてしまう患者さんを よく見かけます。
しかし、永久歯において、親知らず以外の歯で抜けたままにしておいて良い場合はほとんどありません。たった一本でも歯を失う事が想像以上に多くの影響をおよぼします。
◆基本的な治療の方法 大きく分けて次の3つです。
歯を失った場合は、顎の骨の状態や・抜けた場所・本数によって治療法は異なります。通常、レントゲン、歯周病検査などの精密検査をし、治療計画をたてます。
【 治療法① インプラント 】
インプラント(人工歯根)療法は第二の永久歯とも呼ばれ、最近注目されている治療法です。健康保険の適応がありませんので自費治療となります。抜けてしまった部分の顎の骨に金属(チタン)でできた人工の歯根を埋め込み、その上に人工の歯を取り付ける治療法です。発育期には治療できません。自由診療となり、保険は使用できません。
インプラント治療のメリット
1.自分の歯に近い感覚で噛める
2.見た目が自然(突然はずれるようなこともない)
3.健康な歯にダメージを与えず、治療後もずっと快適に使える。
4.顎の骨を健康に保つことができる
顎(あご)の骨にしっかりと固定されて自分の歯に近い感覚で噛めるのが利点です。また、抜いた部分のみの治療で歯を入れることができる為、手前の歯や奥の歯を削ったり義歯のバネをかけたり他の歯に影響を与えることなく咬む力を回復できます。見た目もキレイに仕上がり、審美性にも優れています。ただし、インプラント治療は、埋めるための外科手術が必要になります。また、人工の歯根が顎(あご)の骨にくっつくまでに 3ヵ月から半年ほどの時間がかかります。顎(あご)の骨が薄い場合や健康状態などによっては、インプラント治療を行えない場合もあります。歯周病がある人は、インプラント治療の前に治しておくことも大切です。
参考ページ >> インプラントとは
【 治療法② ブリッジ 】
失った歯の両隣に残っている歯を削って冠を被せ、橋を架けるように連結した人工の歯で失った歯を補っていく方法です。失った歯が1~2本と少ない場合に行なうことが可能です。
ブリッジ治療のメリット
1.自分の歯に近い感覚で噛める(固定式)
2.見た目が自然(保険治療では奥歯は金属色)
3.手術の必要は無い
4.治療期間が短い
一般的にもっとも良く使われるのが、このブリッジです。インプラントと違い手術の必要はありません。また、健康保険が適用されます。固定式なので一度つけるとそのままでOK、異物感が少なく、普通の歯と同じように磨き、使うことができます。見た目も自然です。ただし、奥歯では金属色のみ健康保険の適応内となります。(保険のものと自費のものがあり、自費の素材を選択することでより見た目が自然になります)
一方、冠を被せる必要があるために 両隣の健康な歯を大きく削らなければならないうえ、歯を失った部分にかかる噛む力を、ブリッジを支える両側の歯で受け止めるため負担がかかり、噛み合わせや口腔清掃の管理が悪いと、歯の寿命が短くなる危険があります。また、失った歯の数や場所によってはブリッジ治療が適用できないなどの欠点はあります。インプラント同様、ご自身とプロによる適切なメンテナンスにより長く快適にお使いいただくためのポイントとなります。
最近では接着技術の向上により、両隣の歯に虫歯がなければ土台となる歯をあまり削らなくてすむ「接着ブリッジ」という治療法も開発されています。
【症例】 59歳女性 左下第二大臼歯の歯根が割れた
【症例】 58歳女性 右上第二小臼歯の歯根が割れた
【 治療法③ 義歯(入れ歯)】
残った歯にクラスプ(金属のバネ)を引っかけて、人工の歯と義歯床(人工の歯肉)を固定する「部分入れ歯」で失った歯を補っていく方法です。ブリッジやインプラントが適用にならない場合は、取り外しのできる義歯(入れ歯)が唯一の治療方法となります。歯がすべてない場合は、義歯床をあごに密着させる「総入れ歯(総義歯)」となります。1本だけ入れ歯も作る事はできます。外れると飲み込んでしまう恐れがあったり、審美的な問題や異物感が大きかったりという理由から、1本だけの入れ歯はあまり作られません。
義歯(入れ歯)治療のメリット
1.残った歯を大きく削る必要が無い
2.簡単に修理することができる
3.取り外して歯を洗うことができる
4.手術の必要は無い
5.治療期間が短い
インプラントと違い手術がありません。健康保険の適応の治療方法です。残った歯を大きく削る必要が無いため、治療は楽です。また、壊れたり噛み合わせに不具合が生じたりしたときも簡単に修理することができます。取り外し式である為、簡単に歯をはずして洗って清潔を保つことができます。
一方、毎日取り外して磨かなくてはならないという煩わしさがあります。そして、ブリッジに比べて噛む力が劣り、ご自分の歯と同等に噛むことは難しく、異物感や審美性の障害といった問題があります。部分入れ歯の位置によってはバネが目立ち、見た目が気になることがあります。さらに、バネをかけた歯の負担が増えるため、口腔清掃の管理が悪いと、歯周病が進行してその歯の寿命が短くなる危険が高くなります。
また、部分義歯の場合、義歯を支えるご自分の歯に大きな力が加わりますので、支える歯の寿命を短くする危険があります。さらに義歯を長く使用していると、支える顎の骨が徐々に少なくなったり、義歯の歯自身も磨り減ったりと時間の経過とともに義歯を作り直すことが必要になります。また、作り直すたびに義歯を支える歯、顎の能力は低下し、使い心地が悪くなっていくことが一般的です。
「バネが見えて目立つ」「厚さがあり違和感がある」といったイメージを持たれがちな入れ歯。ですが近年では優れた素材も多く登場していますし、きちんと調整することでとても自然で咬み心地の良いものができあがります。健康保険が適用されませんが、バネの代わりに磁石などで固定する方法もあります。保険が適用される治療法では、他の健康な歯にバネをかけて固定します。そのため、健康な歯を傷つけてしまう危険性があります。他の歯に影響が少ない、バネのないものも開発されています。この場合、保険は適用されません。
関連ページ:Q&A 「ノンクラスプデンチャーについて教えてください。」