Q&A

歯周病が全身の健康に影響を及ぼすとききましたが、どのようなことでしょうか?


 

perio003-150x150歯周病は虫歯とともに、歯を失う大きな原因のひとつです。歯は、食べ物がはじめて出会う最初の『消化器』です。それだけに、歯を失うと十分に咀嚼(かみ砕き・すりつぶし)することができなくなり、大きな影響がからだ全体に及んでしまいます。

 

その歯周病の予防には、本人の毎日のセルフケアと定期的な歯科医院でのケアが欠かすことができません。歯間ブラシやデンタルフロスを使って歯の手入れをし、歯科医院でプラーク(歯垢)や歯石のクリーニングを受けても歯肉の炎症がおさまらないときは、健康状態や生活習慣に問題がある可能性があります。

また、最近では逆に歯周病菌が全身のさまざまな病気に影響を及ぼしていることがわかってきました。
代表的な歯周病と他の病気や健康との関係について説明していきましょう。

 

(1) 歯周病対策でメタボの予防

periodontosis05-150x150メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪型肥満に、

1) 高血糖、2) 高血圧、3) 脂質異常

の3 項目のうち2項目以上に異常がある場合にあてはまるとされています。
放っておくと動脈硬化が進み、脳卒中や狭心症・心筋梗塞などの心臓病の危険が高くなります。こうした危険な状態を招かないためにも、メタボリックシンドローム対策が重要とされています。

このメタボリックシンドロームが、歯周病と影響し合っていることが近年の研究でわかってきました。歯周病菌がだす毒素が脂肪組織や肝臓のインスリン抵抗性を増加させ、血糖値を上昇させたり、重度歯周病患者では動脈硬化や心筋梗塞発症の危険が高まると考えられています。さらには、歯周病の慢性炎症が老化を促進するという論文も出てきました。

このように歯周病とメタボリックシンドロームの関連性が注目されています。

 

(2) 歯周病予防で肥満予防、解消

食生活において歯周病予防を心がけるポイントは、規則正しい食事をして、間食を減らすことと、よく噛んで食べることです。 間食を減らせば、それだけ食べかすが歯につく機会が減りますし、また、しっかり噛めば、唾液がよく出て口の中をきれいにし、歯周病を防ぐことができます。これは、同時に余分な間食をやめるだけでも肥満防止になりますし、よく噛んで食べれば、満腹感が得られて、食べ過ぎないですみます。

さらに、噛むことが肥満を防ぐメカニズムもわかってきました。脳内にある神経ヒスタミンという物質が食欲を抑え、エネルギーを消費させる働きをもっており、この神経ヒスタミンは、噛むことで活性化するというものです。「一口30 回噛む」ことは、肥満予防法として、一般的な保健指導の場においても行われています。

 

(3) 歯周病を治療して、糖尿病の改善

昔から糖尿病は、歯周病やむし歯を悪化させる病気だと言われてきました。実際、歯周病は、網膜症、腎症、神経障害、心筋梗塞、脳梗塞に次いで、糖尿病の第6番目の合併症といわれ、糖尿病によって歯周病にかかりやすいことはよく知られています。

何故、糖尿病で歯周病やむし歯が起こりやすいかというと、糖尿病の人は、免疫力が低下していることと、血の巡りが悪くなる為歯ぐきの炎症がおこりやすくなります。それに加え、唾液の量が減少し口の中が乾燥しやすくなります。その結果、歯周病をもたらし、悪化させるといわれています。

また逆に、歯周病が糖尿病を悪化させていることがわかってきました。 歯周病は慢性炎症です。炎症によって出てくる物質TNF-α(炎症性サイトカイン・生理活性物質)が、インスリンの血糖値をコントロールする働きを妨げて、糖尿病の状態を悪くするといわれています。糖尿病を合併した歯周病患者に歯周病治療を施したところ、先ほど書いたTNF-αが減少し、同時に糖尿病の指標のHbA1c も改善がみられたという結果が得られています。つまり、歯周病を治療すると糖尿病も改善することも分かってきています。

糖尿病のある方は、食生活や運動不足に注意するとともに、歯科医院で定期的にチェックを受け、歯周病がある方は歯周病治療を徹底的に受ける事が重要です。

 

periodontosis03-150x150(4) 歯周病予防で心臓病も防ぐ

歯周病になると、歯周病の原因となる細菌が血液中に入り、心臓などに感染をひきおこす場合があります。

心臓の内膜や弁膜に障害のある方にみられる『細菌性心内膜炎』は、歯周病の患者さんで非常にリスクのある病気の一つです。それは、その原因のほとんどが口の中にいる細菌だからです。実際にこの病気は歯ぐきが健康な人に比べ、歯周病の患者様の発症率が1.5倍から2倍多いと報告されています。

さらに、歯周病が狭心症や心筋梗塞などの心臓病のリスクを高めることもわかってきました。動脈硬化とは、血管が厚く硬くなり血管の内側が狭くなり血液が流れにくくなる病気です。歯周病菌が動脈硬化をおこしている血管に付着すると、血管を狭める作用を促進すると考えられています。歯周病の原因菌が心臓をとり巻く冠動脈に感染すると、毒素や炎症をひきおこす物質が出て血栓を起こしやすくし、動脈硬化を進行させ、血管が狭くなったり(狭心症)、詰まったりする(心筋梗塞)のが虚血性の心臓病をひきおこす可能性も指摘されています。実際に動脈硬化をおこしている血管の細胞から、歯周病菌が検出されているとの報告があります。

血圧、コレステロール、中性脂肪が高めの方は、歯周病があればしっかり治療し、心臓病のリスクを遠ざけたいものです。予防には口の中を清潔に保つ日々のケア、歯科医院での定期ケアが欠かせません。

 

(5) 知らないとコワイ 歯周病と女性のからだ

女性と歯周病の関係では、妊娠・出産や閉経後に増える骨粗しょう症などが深く関係していることがわかってきました。

periodontosis04-150x150* 歯周病菌が妊娠・出産時にも悪影響

一般に妊娠すると、つわりがひどかったりして口腔ケア(歯みがき)がむずかしくなりがちです。そのうえ、妊娠中は女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)が歯ぐきに影響を及ぼして、妊娠性歯肉炎が起きやすくなります。特に、これらのホルモンは妊娠後期には月経時の10~30 倍になるといわれており、このため妊娠中期から後期にかけて妊娠性の歯肉炎が起こりやすくなるのです。 ただ、基本的にはプラーク(歯垢)の磨き残しのない清潔なお口の中では起こらないか、起こっても軽度ですみますので、妊娠中は特に気をつけて口腔ケア(歯磨き)を行いましょう。 油断すると出産後に本格的な歯周病に移行する場合もありますので、注意が必要です。

また、妊婦さんが歯周病にかかっていると、おなかの赤ちゃんが、小さく生まれたり、早産となるリスクが高まることが知られています。これは、口の中の歯周病の炎症で出てくるプロスタグランジン(子宮の収縮などに関わる生理活性物質)などの物質が、胎盤に影響するためであると考えられています。歯周病を持つ妊婦では早産の可能性が7倍以上も高まるという報告もあり、その危険率はタバコやアルコール、高齢出産などよりもはるかに高い数字なのです。

妊娠中は自分自身のためだけでなく、生まれてくる赤ちゃんのためにも、お口の状態に気をつけましょう。

 

periodontosis061-150x150* 更年期女性は要注意!骨粗しょう症と歯周病は相互に関係

骨粗しょう症とは、全身の骨強度(密度)が減ってもろくなり、骨折しやすくなる病気です。日本では推定約1.000 万人以上の患者がいると言われ、その約90%が女性です。骨粗しょう症の中でも閉経後骨粗しょう症は、閉経による卵巣機能の低下により、骨代謝にかかわるホルモンのエストロゲン分泌の低下により発症します。

閉経後骨粗しょう症の患者さんにおいて、歯周病が進行しやすい原因として最も重要と考えられているのも、エストロゲンの欠乏です。エストロゲンの分泌が少なくなると、全身の骨がもろくなるとともに、歯槽骨(歯を支える骨)ももろくなり、歯周病の進行が加速されると考えられています。多くの研究で、骨粗しょう症と歯の喪失とは関連性があると報告されています。 したがって、閉経後の女性は、たとえ歯周炎がなくても、エストロゲンの減少により、歯周病にかかりやすく、広がりやすい状態にあるといえます。

また、骨粗しょう症の薬としてよく用いられるビスフォスフォネート製剤(BP 系薬剤)という薬があり、これを服用している方が抜歯などをした場合、周囲の骨が壊死するなどのトラブル(副作用)が報告されています。このBP 系薬剤を服用されている場合は、特に歯周病が悪化しないように予防することが大切です。

 


(6) 歯周病の予防が認知症のリスクを減らす

afe46a2d7fc058d6f8e663c80fc9adc7「認知症」とは、物忘れ、日付を間違えたり、場所や人を覚えられなくなったりするなどの症状、さらには妄想まで現れてしまうといった脳の病気です。誰しもが予防したい病気ですが、歯周病を防ぐことは、認知症を予防することにもつながってくるのです。

認知症には、「脳血管性認知症」と「アルツハイマー型認知症」の2種類があります。

脳血管性認知症の原因は脳の血管がつまったり、破れたりして、その部分の脳の働きが悪くなることによっておきる認知症です。脳の血管で動脈硬化がおこるものですから、予防には動脈硬化を防ぐことが大切なポイントです。歯周病菌は動脈硬化を促進し血管をつまらせる原因となりますので、歯のクリーニング (PMTC)などの歯周病の予防や治療をおこなうことによって、脳血管性認知症のリスクを減らすことも大切です。

 

アルツハイマー型認知症は、原因は不明ですが、脳に萎縮が見られるのが特徴の病気です。CT(コンピュータ断層撮影)画像検査での調査で、残っている歯が少ない人ほど脳の萎縮が進んでアルツハイマー型認知症にかかりやすい傾向にあるという報告があります。噛むことは脳を活性化させ、認知症を防ぐこともわかってきています。噛むことで刺激が歯根膜から脳へ伝わり、アセチルコリン(学習能力に深く 関わる伝達物質)を増やすというのものです。この伝達物質の量が減るとアルツハイマー型認知症を引きおこす原因になるとも考えられています。

今も昔も抜歯原因の第一位は歯周病です。歯周病を予防して歯を保つことは、認知症を予防することにもつながります。

 

periodontosis02-150x150(7) 口の中を清潔に保つことが肺炎を防ぎます

肺炎は、肺にウイルスや細菌などが感染して肺に炎症がおこる病気です。肺炎はがん、心臓病、脳卒中についで、亡くなる原因の第4位を占めます。特に高齢者ではその率が急増し、亡くなる原因として、もっとも多いのが肺炎です。その中でも、多くを占めるといわれているのが、「誤嚥性(ごえんせい)肺炎」です。

肺や気管は、咳をすることで異物が入らないように守っています。しかし、高齢になるとこれらの機能が衰えるため、むせたりして誤って食べ物や唾液が気管から肺の中へ入ってしまうことがあります。その結果、免疫力の衰えた高齢者では誤嚥性肺炎を発症してしまいます。特に、高齢者・寝たきりの人や、脳卒中の後遺症などで飲み込む力が衰えている人に多く発生しています。

誤嚥性肺炎をおこした人から、歯周病菌が多く見つかるため、歯周病菌が誤嚥性肺炎の重大な原因の一つと考えられています。口の中が細菌の少ない状態に保たれていれば、そのリスクを減らすことができます。そのためには、健康なときから、口の中を清潔に保つケアを習慣づけることが大切です。万一、寝たきりや体が不自由になった場合も、家族や歯科医師・歯科衛生士の協力でお口のケアを続けたいものです。

 

以上のように、歯周病と全身に多くの影響を与えることは昨今の研究で明らかになってきています。
歯周病も糖尿病も生活習慣病ですから互いに深い関係があって不思議ではありません。毎日の食生活を含めた生活習慣を見直し、歯周病を予防する事が全身の生活習慣病を予防することにつながります。

全身の病気から守るために健康診断でチェックするように、ご自身の歯を守るために歯科医院で定期検診を受け、むし歯、歯周病などのチェックが重要です。



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