上唇小帯の付着異常と言われました。どういう状態のことでしょうか?治療は?
上くちびるの裏側中央から歯茎に伸びるスジを、「上唇小帯」(じょうしんしょうたい)と呼びます。 大人にも子どもにもあります。
この上唇小帯は 成長と共に徐々に形・大きさ・位置も変化していきます。乳幼児期、特に2歳くらいまではこの上唇小帯が太くて目立ち、上の前歯の間に割って入るように発達している場合が 多くみられます。しかし、成長するにつれて上あごが発育して歯槽骨が高くなる為、上唇小帯の位置が移動し徐々に低くなり、幅も狭くなっていくのが普通です。上の前歯が、永久歯に生え変わっても歯と歯の間に小帯が入り込んでいるような場合を、上唇小帯の「付着異常」と診断されます。
◆ 何が問題なのでしょう?
この上唇小帯の「付着異常」によって、前歯の歯の間に入り込んだ「すじ」が原因で、永久歯の真ん中が閉じることができずに離れた「正中離開」(せいちゅうりかい)の状態になりやすくなります。
上唇小帯の「付着異常」の状態は、小帯が歯茎に付いている位置が歯に近く歯磨きをするのにかなり邪魔になる為、歯磨きの際に歯ブラシが小帯に当たって傷をつくりやすく、また、ていねいに磨くようにしなければ、磨き残しをやすく、歯肉炎やむし歯になる危険が高いため注意が必要です。
「すじ」が長いと仕上げ磨きがしにくく、前歯の仕上げ磨きをする際に歯ブラシによる上唇小帯を傷つけて、子供が痛くていやがってしまいまうことがあります。その際は指で 「すじ」を隠すようにして前歯を磨いてください。
◆ 治療方法は?
では正中離開が心配され、上唇小帯の付着異常と診断された子供にはどのような処置が施されるのでしょうか。一般的にはごく少量の局所麻酔をした後、メスなどで小帯を切って縫う「上唇小帯切除術」(じょうしんしょうたい せつじょじゅつ)という方法がとられます。処置の程度にもよりますが、腫れはほとんど無いのが普通です。処置時間も15分程度で、それほど難しい処置ではありません。
◆ 治療のタイミングは?
上唇小帯の「付着異常」がみられる場合には、その「付着異常」の程度と 現在の障害の程度(正中離開の程度等)、そして将来起こりうる障害(歯並び等)の予測に基づいて処置方針を決定します。
1歳6ヶ月児健診などで 小帯の異常を指摘される場合がありますが、軽度のものであれば、すぐに「上唇小帯切除術」をするようなことをせず、ほとんどの場合経過をみていただいて大丈夫だと思われます。細ければ自然に切れることもありますし、成長とともに自然に治る場合もあります。
実際には 一度、しっかりと診断していただいた上で、軽度なものであれば、小帯を傷つけずにきれいにする歯の磨き方を教わり、前歯が永久歯に生え変わる、6~7歳まで定期健診で観察して判断してもよいと 考えています。正中離開の原因は他にもありますから、お子さんの歯を見て、気になるようであれば、かかりつけの歯医者さんを受診し、相談してみるとよいと思います。
◆ 上唇小帯付着異常の症例
【 症例 4412 】男児:上唇小帯の付着異常(上唇小帯切除)
【 症例 3832 】 女児:上唇小帯の付着異常(上唇小帯切除)
【 症例 3718 】 女児:上唇小帯の付着異常(上唇小帯切除)