インプラント治療は誰でも受けられますか?
インプラント治療は、失われた「歯根」の代わりにチタン製の人工歯根を歯肉の下の骨の中にインプラント(インプラント体)と呼ばれる人工の歯の根を埋め込んで、その上にかぶせ物(人工の歯)をすることによって歯をおぎなう治療法です。
チタンは、体内に入っても異物とみなされず骨と結合しやすい特性(生体親和性)を持っており、インプラント治療はチタンの持つ生体親和性を利用しています。
>>参考ページ:「インプラントとは」
骨がまだ成長している時期は歯や顎の位置・かみ合わせなどが定まっていないので、インプラント治療は避けた方がよいでしょう。個人差はありますが、一般的には骨の成長の終わった18~20歳以降からインプラント治療を受けられます。
成人の場合は(ご高齢の方であっても)、健康であれば基本的にはどなたでもインプラント治療は可能です。
実際に70歳代、80歳代の方でも安全にインプラント治療を受けていらっしゃいます。
だだ、全身的な状態、お口の状態、癖などによって、注意が必要な(制限を受ける)可能性もあります。
◆全身的な理由
インプラント治療をしてもインプラントと骨が付かなかったり、治療後に歯茎や骨が治りにくかったりするため、とくに慎重な対応が必要とされるためです。
1.骨粗鬆症の方
骨が弱く、インプラントが固定が難しいため注意が必要です。また、骨粗鬆症の治療でビスフォスフォネート系のお薬を飲んでいる方は、外科処置を行うことができないため、インプラント治療を行うことは出来ません。
2.心臓疾患が重症な方
避けたほうがいいでしょう。軽度の方でも十分に、心臓への感染対策を行ってからインプラント処置をします。
3.高血圧症の方
内科で血圧をコントロールされている必要があります。血圧は痛みや緊張などにより血圧は大きく変動します。血圧の薬を飲みながら、血圧をモニタリングしながらインプラント処置を行います。
4.糖尿病の方
細菌に弱く感染症にかかりやすいため注意が必要です。インプラント埋入の外科処置後の回復が遅れ、インプラントと骨が付く前に感染して抜けてしまうことがあります。糖尿病の治療をきちんと行い、コントロールしておく必要があります。
5.抗血栓療法(抗凝固剤を服薬中)の方
外科処置を行うと止血がしにくくなるため、インプラント埋入の外科処置を行うにあたり、主治医に確認してから行うことになります。
6.リュウマチ
お体の状態や普段飲んでいるお薬の種類(ステロイドやビスフォスフォネート系のお薬を飲んでいることもあります)によってかわります。必ず主治医に確認したうえで行うようにします。
7.不安が多い神経疾患の方
精神的に不安になり耐えられない方は無理に行わないほうがいいでしょう。
◆タバコを吸われる方
喫煙はニコチンにより歯茎の毛細血管を収縮させて、インプラントの周りの抵抗力を低下させます。
タバコによりインプラントができなくなるわけではありませんが、インプラント治療の手術後の傷の治りが悪くなってしまい、インプラント手術初期の感染や長期的な歯周病に対するリスクが高くなります。より安全にインプラント治療を受けていただく為に、禁煙、節煙していただくことをお勧めしています。
◆歯周病が進行した方
インプラントも天然の歯と同じように歯周病に罹るためです。インプラントは天然の歯よ りも歯周病を防御する力が弱く、インプラントが歯周病に罹ると天然歯の歯周病と同じように周囲の歯茎が腫れたり、膿が出たり、悪化してしまうと最終的に歯周病で抜けてきてしまう危険があります。
インプラントを歯周病から守るために、歯周病治療を先行する必要があります。患者さん自身で行うことは、インプラントの周りの汚れが残らないような磨き方を習慣にすることが大切です。また、定期的に歯医者でクリーニン グを行い、インプラントを歯周病から守る必要があります。
◆激しく歯ぎしりをなさる方
歯ぎしりはインプラントだけではなく、他の歯に取っても脅威です。歯ぎしりによる力は普段食事で噛む力の何十倍にもなります。インプラント自身のかぶせ物が壊れたり、噛み合せの歯を傷めたりしてしまいます。
歯ぎしりが強い方は必ずマウスピースで歯やインプラントを守りましょう。
◆骨の不足による場合
インプラントが困難であったり、中には行うことができないケースもあります。インプラント体を埋入(埋め込み)できるだけの骨の幅と量が必要になるためです。
しかし、骨の状態が十分ではない方も、骨の量と質を補う 数々の技術が進歩してきています。それらの最新の技術により、今まで インプラントが難しかった方でも インプラント治療が可能になっています。
インプラント治療を検討されている場合、まず治療前に骨の量は十分か、歯や歯肉の状態はどうかなど、きちんとした診査、診断をおこなうことが大切になります。