転んで歯を打ってしまい抜けた場合、どのような対応が必要でしょうか?
(再植が可能な場合)
◆ 歯の完全脱臼(かんぜんだっきゅう)
歯が歯槽骨(しそうこつ)から完全に抜けた状態 をいいます。転倒しやすい幼児や学童の外傷ではしばしばみられます。抜けた歯の状態が悪いと、歯を残すのが困難なことがあります。前歯がないと、見た目も悪く、言葉や食べることに影響がでます。このような場合の治療としては、永久歯では一般的に入れ歯、ブリッジ、インプラントなどの治療法などがあげられ、咬み合せの状態に合わせて治療方法を選ぶ必要があります。 子供(乳歯)の場合、乳歯がなくなると、後から生えてくる永久歯の歯並びや言葉、食べ方などに影響することも考えられ、適切な対処が望まれます。
【 治療 】
不幸にして歯が完全脱臼しても、すぐに手当てをすれば歯を助けることができます。
歯の根は骨の中に埋まっています。直接、骨にくっついているわけではなく、歯と骨の間に歯根膜という結合組織が介在しています。歯をぶつけて抜けた場合、歯根膜の中央で断裂します。すなわち、歯根膜の半分は、歯についたまま抜けます。抜けた歯が助かるかどうかは、この抜けた歯についている歯根膜が生きているかどうかにかかっています。もし、生きていれば、歯を元の骨の穴(抜歯窩)に 戻す(再植する)ことにより、歯は再び機能を回復して使うことができるようになります。また、歯の根っこの先が、まだ完成していない成長中の歯であれば、再植後に神経が生き返ることもあります。歯根膜は乾燥に弱く、口の外では、およそ30分くらいしか生きていることができません。したがって、乾燥させないようにして、できるだけ早く歯医者さんに元に戻してもらうことが重要です。
◆実際の対処方法は?
抜けた歯を助ける最も良い方法は、抜けた歯を自分でまず元の位置に戻してみることです。抜けた歯が床や地面などに落ちて汚れている場合は、まず、水道水で歯に付いた汚れを洗い流しましょう。(せいぜい数十秒ほど)。このときは、歯根膜を傷めないように歯の根の部分は持たないようにまた、ゴシゴシこすったりして汚れを拭き取らないようにしましょう。もとの位置に戻した後はできるだけ早く歯科医院に受診しましょう。
:歯の根の部分を触らないように
もし、抜けた歯をもとに戻せなかった場合は、乾燥させないように注意して歯科医院に持ってゆき歯医者さんに もとにもどしてもらわなければなりません。
歯根膜を乾燥させずに長く生かしておくためには、水道水に浸しておくのは好ましくありません。もっと良いのは『歯牙保存液』ですが、普通の家庭には用意してあるものではありません。(保健室などに用意してあるかもしれません。)身近に使えるものとしては、害が無くて、浸透圧などが一番近い『牛乳』がよいとされています。牛乳の中に漬けておくことによって、歯根膜を数時間生かしておくことが可能です。すぐに牛乳を用意することができない場合は、抜けた歯を、口の中(飲み込まないように歯を唇と歯ぐきの間など)に入れて唾に浸しておくのも有効です。このように乾燥させないようにして、できるだけ早く歯医者さんに抜けた歯を持ってゆき抜けた歯をもどしてもらいましょう。
いずれにしても、できるだけ歯根膜にダメージを加えず、早く処置を受けることが重要です。歯をもとに戻した後は、しばらくの間、固定装置でその歯の安静を保ちます。歯の神経(歯髄)が生きているかどうかを確認し、必要があれば歯髄の処置をします。歯が生えてから2、3年以内のまだ根っこの先が完全にできあがっていない根未完成永久歯の場合は、歯髄(神経)が回復する可能性が高いといわれています。
:歯の固定装置で安静を保つ
なお、歯をもとに戻したあとの経過ですが、正常な歯とほとんど同じ状態に回復できればよいのですが、永久歯をもとに戻すまでの条件によっては、歯根膜が生着できずに歯根は直接歯槽骨と癒着して、再植歯と隣りの正常な歯との高さが年々違ってきます。また、歯根が徐々に吸収してしまい比較的早い時期にとれてしまう(抜去せざるを得ない)もあります。