生まれたばかりの赤ちゃんに、歯(先天性歯)が生えています。
【どんな病気?】
赤ちゃんの乳歯は、一般に6~8か月頃に下顎の前歯(乳中切歯)が生えてきますが、生まれたときにすでに生えている歯、あるいは生後間もない赤ちゃん(生後2ヶ月以内)に生えてくる歯(新生歯)も含めて総称して「先天性歯(せんてんせいし)」と呼んでいます。また、この歯は「鬼歯」や「魔歯(まし)」とも呼ばれます。
舌の裏側に歯があたって潰瘍(リガフェーデ病)を起こしたり、お母さんの乳首に傷がつき、授乳に支障をきたすことがあります。
先天性歯は多くの場合、白くきれいな歯ではないことが多く、歯の構造が完全でなく、茶色がかった色をしていたり、表面に凹凸があったり、ざらざらして表面のエナメル質が薄くもろい性質をしています。また、根が未完成でしっかりとはえていないことも多く、グラグラゆれる状態のことがあります。
【どのくらいの赤ちゃんにみられますか?】
生まれながらに歯が生えている「先天歯」の発生頻度は、1000人のうち、1人か2人くらいの割合(研究によって違いますがおよそ0.05~0.2%)の子にみられます。ですから、それほど多いものではありません。多くが下顎の前歯(乳中切歯部)に1本~2本みられます。(まれに上前歯に生えることもあるようです)先天歯には2種類あって、ホントは もう少し後で生えてくるはずの 本来の乳歯が早く生えてきたという場合と、余分な歯(過剰歯:かじょうし)が他の乳歯より早く生えてきた場合があります。
【乳歯、余分な歯の区別はどうやってわかりますか?】
過剰歯(余分な歯)は抜歯の適応になります。「先天歯」が本来の乳歯が生えてきたものか、過剰歯(余分な歯)か の判断は、X線撮影により確認するか、他の乳歯が生えてくるまで待つことになります。多くが未成熟のまま生えてきた本来の乳歯であるという報告もあります。
【治療】
しかし、先天性歯は早く生えてくるため、歯の形成が未熟で歯根も出来ていないことが多く、歯がぐらぐらしていて 抜けそうな状態の場合もあるのです。そのため、自然に抜けて赤ちゃんが誤飲するのを防ぐために抜歯する場合もあります。
抜いた(抜けた)場合には、その乳歯はもう生えてきませんが、永久歯はちゃんと生えてきますので心配はいりません。(永久歯が先天欠如している場合もありますので、精査が必要です)
もし、しっかり生えていて授乳に影響が無ければ、なるべくそのまま様子を見ます。赤ちゃんの舌の裏側に歯が当たることにより、潰瘍(リガフェーデ病)を引き起こすことがあります。リガフェーデ病とは、先天性歯の尖った切縁で慢性的に口の中(舌小帯や舌尖部)が刺激を受けることにより褥創性潰瘍と反応性の線維性肉芽組織が増殖するものです。その痛みで母乳やミルクの飲みが悪くなったり、授乳時に歯の先端が尖っているためママの乳首を傷つけてしまうとき、またはその恐れのあるときは、歯の先端のとがった部分を削ってなめらかにしたり、歯科材料でカバーすることで改善させます。他の方法で解決できないときは、やむをえず抜歯することがあります。こうすることにより、潰瘍が治り授乳にも障りがなくなるので、先天性歯で問題が出た場合は歯科医に相談してみてください。
歯としての構造が不完全で感染を起こして膿んでしまったりすることも多く、そのような場合は治療が必要になります。
将来には、余分な歯(過剰歯)であるかどうかを確かめたり、本来の歯を抜いた場合には歯並びの管理など、定期的な経過観察や歯科的ケアが必要です。早めに受診しておくとよいでしょう。いずれにせよ、こうして生えた先天性歯は表面のエナメル質がもろかったり虫歯になりやすいので、日頃の歯のケアと定期的なフッ素塗布を欠かさずに行いましょう。