歯科治療による金属アレルギーについて教えてください。
現代の日本は豊かになり、昔はなかった様々な材料に触れる機会が増えてきています。それにより、私達は新たなアレルギー物質に触れる機会が増え、結果としてその物質に対してのアレルギー反応を引き起こす機会が増えているのです。
◆ 『金属アレルギー』とは
夏場などに、汗をかいた時に、金属の装飾品を身につけた首まわりや、耳に、かゆみを生じて赤い湿疹ができるなど、体が拒否反応をしてしまうことは 「金属アレルギー」として一般的によく知られています。ネックレス、ピアスなどのほかに、ヘアピン、髪飾り、眼鏡フレーム、時計の皮バンド、化粧品などに含まれる水銀、ニッケル、クロム、コバルト、パラジウムなどの金属が引き起こすアレルギーです。
通常、金属そのものは、身体に対して無害なものです。金属が汗や唾液などに溶け出てイオン化して体内に取り込まれ、
タンパク質と結合することで生体的には存在しない異種蛋白となります。この物質を異常なものと身体が認識してしまうため、アレルギー性をもつようになるのです。
◆ 銀歯で金属アレルギーを起こすことがあります
大きく進んでしまったむし歯を治す場合、むし歯を削り取った後そこに金属の詰め物や被せ物をする治療をする場合が多くあります。その詰め物や被せ物の金属が原因で色々なアレルギーが引き起こすことがあることが知られています。
◆その症状は口の中ばかりではありません
ピアスやネックレスなどによる金属アレルギー症状は接触している皮膚に発症しますから、その原因に気がつくきっかけになります。 しかし、ここで知っておいていただきたいのは、「歯科材料による金属アレルギー」は口の中ばかりに症状がおきるのではないということ。アトピー性皮膚炎など、顔や手足など直接金属が触れていない部位に症状が出るために、
「歯科材料による金属アレルギー」が原因だと気づきにくいのです。
もっとも多いのは、手や足の裏に水泡や膿をもった膿胞ができる症状。次いで、口の中の粘膜にわずかに隆起した白線ができる症状。さらに、口内炎や歯肉炎、衣服などに触れている皮膚が炎症を起こす接触性皮膚炎、発疹、などが代表的な症例です。
< 顔面・口の中に起こる症状 >
口内炎、口角炎、口唇炎(こうしんえん)、舌炎、歯肉炎、口腔扁平苔癬(こうくうへんぺいたいせん:口腔粘膜における慢性の角化異常を伴う病変のひとつ)など。
< 全身の症状 >
アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、皮膚そう痒症、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう:手のひら・足の裏、あるいはその近辺にできる小さな水疱)など
◆ 金属アレルギーを起こしやすい材料
歯科治療において、多くの金属を使用します(特に健康保険内の治療)。詰め物や被せ物、入れ歯の針金、場合によってはセメント(歯科用接着材)にも金属が含まれています。歯科治療に使用した金属が長い間にお口の中に溶け出し、それが体に取り込まれてアレルギー反応を起こしてしまうことが原因です。
【 金属アレルギーの原因となりやすい金属 】
コバルト、スズ、パラジウム、インジウム、イリジウム、クロム、ニッケル、水銀
【 上記を含む主な歯科用金属 】
<保険治療>
・金銀パラジウム合金
保険治療の差し歯、銀のかぶせ物で多く使用される金属
・ニッケルクロム合金
金銀パラジウム合金よりもアレルギーの危険が高い
・アマルガム
アマルガムに使用される水銀は無機水銀で、毒性はありませんがアレルギーをおこしやすい
・銀合金
乳歯の治療や、神経を取った歯の土台などに使用されます。錆びやすく、溶出して歯茎を黒く変色させることが
あります。銀自体はアレルギーの原因になりにくい素材ですが、合金に含まれるほかの金属がアレルギーを
引き起こすことがあります。
<自費治療>
・金合金 /白金加金
金を主体とした合金で、錆びにくい金属です。保険治療で使用される金属に比べ、金や白金は金属の溶け出しや、
歯茎の変色のリスクが低いのですが、通常金属の性質を向上する為に、他の金属を混ぜて合金にしています。
金合金に含まれる他の金属が問題を起こす可能性があります。アレルギーを起こしにくい金属のみで作られた
合金もあり、目的に応じて使い分けています。
◆金属アレルギーの症例