歯根分割抜去法(分割抜歯)について教えてください。
自分の歯をぎりぎりまで残す、できるだけ歯を抜かずに治す治療方法
歯根分割抜去法(しこんぶんかつばっきょほう)
奥歯のように複数の根を持つ歯においては、全ての歯根が同時に悪くなるとは限りません。そのようなとき、問題のある歯根だけを部分的に抜歯して健全な歯根を残す方法を歯根分割抜去法(しこんぶんかつばっきょほう)と言います。下顎大臼歯などに多くみられる2根管性の歯は 歯を2分割することから、ヘミ(半分)セクション(hemisection)、上顎大臼歯などの3根ある場合に1根を分割抜去することをトライセクション(trisection)と呼びます。残すほうの歯根が良い状態であることが必要です。抜いた残った根は隣の歯と連結してブリッジによって、機能を回復することが一般的です。
◆奥歯の構造
『歯冠』は歯茎(歯肉)から上の、目に見えるエナメル質で出来た、白い部分を いいます。『歯根』は歯茎(歯肉)から下の、隠れている部分をいいます。前歯などは1本の歯の根しかありませんが、奥歯は複数の根があるのが一般的です。
*上顎の奥歯は3根
上顎の最後方の2本(大臼歯)は 根が3本の根に分かれていることが多く、3根のうち1根を抜いても残りの2本で、歯を被せたり ブリッジで歯を入れて治すことができる可能性があります。
*下顎の奥歯は2根
下の最後方の2本(大臼歯)は、根が2本の根に分かれていることが多く、2根のうちどちらか1根が残すことができれば、ブリッジで歯を入れて治すことができる可能性があります。
下顎大臼歯は2本、上顎大臼歯は3本の歯根を持つのが一般的です。しかし第一大臼歯から第二大臼歯、親知らずと後方にいくほど、複数の根が癒合して一つの根(単根)になる傾向があります。また、根が分かれている位置が、歯茎の下の低い位置である場合も歯根分割抜去が困難な場合があります。処置には術前に十分な精査が必要です。
◆治療手順
1. 根管治療
神経が残っている場合は、あらかじめ抜髄(神経を取る)治療、すでに神経が取ってある歯であっても必要に応じて根管治療を終わらせておくのが一般的です。
2. 根が分かれている部分で切断
麻酔を行った後で、根が枝分かれする部分で切断する。
3. 1根だけを抜歯する
下顎の大臼歯であれば2根のうち1根だけ残して、上顎の大臼歯であれば3根のうち 2根を残して、治療困難な状態の1根だけ抜歯します。
4. 残した根に冠を被せる
歯を切断して部分的に根を抜歯して残した歯は、抜歯した傷が治った後に被せます。単独で被せる場合や、部分的に抜歯した根の部分のブリッジの土台として利用します。
◆歯根分割抜去法(分割抜歯)の利点
半分でも残すことが出来れば歯は小さくなりますが、「入れ歯」や「インプラント」を避け、ブリッジを選択することも可能にすることができることがあります。また臼歯を分割しないで1本丸ごと抜くよりも、ブリッジが短くできたり、ムシ歯でない歯を削らなくてすむのというメリットもあります。
◆治療症例