虫歯になっていないにもかかわらず、歯がしみる」というのが、知覚過敏症です。
知覚過敏になってしまったらどのように治療、治していくのでしょうか?ただ、知覚過敏の症状の程度はさまざまですし、知覚過敏の原因もさまざまです。
基本的には、知覚過敏の治療は しみる症状や痛みなどの さしせまった症状を改善する「対症療法」と、原因を突き止めてその原因を取り除く「原因治療」を並行して進めて行くことになります。
◎ 軽症の場合
★ 丁寧な歯磨き ★
誤った歯の磨き方や不適切な歯ブラシは、症状を悪化させます。まず、歯ブラシは毛先の軟らかめものに替え、露出した歯根の表面についたプラーク(歯垢)を丁寧に取り除くことから始めます。この時、決して力を入れてゴシゴシしないことです。歯根(象牙質)は歯の頭(エナメル質)に比べて柔らかいので、歯根を削ってしまう危険があります。やさしく、小さな動きで丁寧に磨きましょう。歯磨き剤は低研磨性のもの、あるいは研磨剤無配合の物を選んで歯根が削れる危険を避けましょう。(歯磨き剤をお使いにならなくてもけっこうです)歯磨き方法を改善するだけでしみなくなる場合もあります。歯科医院のアドバイスを受けながら歯を正しく磨きましょう。
★ 知覚過敏防止の歯磨き剤を使う ★
歯磨き粉は、知覚過敏防止用の「シュミテクト」や「システマセンシテイブ」などの使用をお勧めします。知覚過敏防止の歯磨き剤には、歯根の表面に開いた象牙細管の穴をふさいで、刺激が伝わりにくくなる成分(硝酸カリウム)が含まれています。知覚過敏防止用の歯磨き粉を使い、正しく歯を磨いて口の中を清潔にすれば、1~2週間ほどで効果が現れてきます。なお、効果はゆっくりとですが、フッ素を利用して歯根の石灰化を促進して症状の軽減を期待することもあります。
*「歯の再石灰化」とは、唾液の中に含まれているカルシウム、リン酸、フッ素イオンなどが歯に沈着し、歯の傷を修復するメカニズムを言います。
◎ 症状が中程度の場合
★ 歯根の表面をコーティング ★
知覚過敏防止用の歯磨き粉を使用して、正しく歯を磨いても治らない場合は、歯の根元のしみる部分に知覚過敏抑制剤の塗り薬でコーティングします。コーティングによって露出した歯根の表面に、一層 膜をはって刺激を伝えにくくして症状を抑えます。これは長期間の耐久性はありませんが、丁寧に歯磨きしているうちに、象牙細管の穴がふさがってしみなくなることが期待できます。
◎ 重症の場合
★ 歯根のくびれを埋める ★
露出した歯根の傷が比較的大きい場合や「くさび状欠損」がある場合は、欠けている部位に歯と同じ色をしたセメントやプラスチック(レジン=樹脂)で埋めて象牙細管を封鎖し、外部からの刺激を遮断する治療を行います。
*「くさび状欠損」とは、歯の生え際のエナメル質とセメント質の境目辺りにくさびを打ち込んだように凹みができる欠損のことです。
★ 歯の神経をとってしみなくする ★
さまざまな治療を行っても 症状が全く改善しない場合、最後の手段として「神経を抜く」ことを選択するしかない場合もあります。ただ、歯の神経を抜くことによって、歯のしみ、痛みを感じないようになりますが、歯の変色(黒ずむ)や、歯がもろくなるなど、さまざまなマイナス面がありますので、歯の神経を抜くのは最終手段の治療として行われます。
原因別治療法
知覚過敏の治療は、原因を突き止めその原因を取り除く根本治療法と、歯がしみたり痛みなど、差し迫った症状を改善する対処療法とが並行して行われます。
ここでは知覚過敏の原因別に根本治療法を中心にご紹介します。
◎ 「歯周病」の場合
歯周病になると歯茎が下がり、象牙質が露出しやすくなるため「歯がしみる」知覚過敏の症状が出やすくなります。歯周病の治療は、歯垢や歯石を取り除き、口の中を清潔に保つことに重点が置かれます。本人が毎日正しい歯磨きの方法で歯を磨き、歯科衛生士によって深い所の歯垢や歯石をも完璧に取り除いて行けば、次第に歯周病は改善されてきます。そうなると、歯ぐきの後退が止まり、唾液によって歯のエナメル質を修復する再石灰化も進み知覚過敏が起こりにくくなります。ただ、歯石を除去する事によって、いままで歯石に覆われていた象牙質が露出し、知覚過敏の症状が一時的にひどくなる可能性も十分ありますから、歯周病治療と併せて薬の塗布・コーティング・ナイトガード(マウスピース)」など、知覚過敏の治療を併せて行うよう になります。
◎ 「歯石除去」の知覚過敏の場合
知覚過敏防止用の歯磨き粉を使って正しく歯を磨き、唾液によるエナメル質の再石灰化を待ち自然に治るのを待ちます。
◎ 「歯ぎしり」や「食いしばり」の影響の場合
知覚過敏の最も大きな原因の1つが「歯ぎしり」です。歯ぎしりが原因で知覚過敏になっていると思われる場合は当然、歯ぎしりを治さないと知覚過敏は治りません。しかし睡眠中の歯ぎしりをやめる事は容易ではありません。そこで歯ぎしりを直接、治す事はできなくても、『ナイトガード(マウスピース)』という歯をカバーする器具を就寝前に歯に装着して歯ぎしりの力を抑制します。
食いしばりの場合は、重たい荷物を持ち上げたりする時に 歯をくいしばる場面が来た時は、一息ついて意識して歯を噛み合わせないように注意します。また、何もしていない時も 意識していると案外、無意識に噛み締めていることがあります。このような時も、意識して歯を噛み合わせないように注意します。これを繰り返すだけでもかなり改善ができます。
◎ 「噛み合せ不良」が影響の場合
知覚過敏の原因となる「咬み合わせ」が悪い場合は、歯を削って咬み合わせが良くなるように調整する『咬合調整』が行われます。
◎ 「歯の磨き過ぎ」(オーバーブラッシング)が影響の場合
歯科医院で指導された正しい歯の磨き方を身につけて励行することです。定期的に歯科医院でチェックを受けましょう。
◎ 「酸蝕歯」の場合
歯磨きは、食後30分以上時間をあけてからにします。口の中の酸が唾液で中和されるのを待つためです。また、磨く前には必ず口を水でゆすぎましょう。お酢入りの料理、フルーツ、ワイン、ドリンク剤などは、治療中は十分注意しましょう。
◎ 「ホワイトニング」の場合
軽症であれば、ホワイトニングの頻度をへらし、時間を短縮します。それでも改善されない場合は、ホワイトニングを中断し歯科医院で「MSコートF」などの薬剤を歯に塗りつけて歯の表面をコーテイングして貰います。
知覚過敏の「対症療法」は、症状が重くなればなるほど決定的な治療法に乏しくなります。最悪の場合は歯の神経を抜かざるを得なくなりますので、歯がしみると感じた時は、できるだけ早く歯科医院を受診しましょう。
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