乳歯列期(2~6歳)の反対咬合を「治療せずに放っておいても大丈夫ですか?」
結論から申し上げますと、乳歯列期の反対咬合は、どのような場合もできるだけ早く治した方がよい結果になると考えています。以前は「3歳では治療はしないで経過をみましょう」と様子をみておりました。その理由は永久歯が生える時に、反対咬合(受け口)が自然に治ることもあるからという理由もありますが、むしろ低年齢児でも使用することができる装置がなかったり、歯の型を採るなどの治療をすることが年齢的に困難であったからです。 しかし、3歳児の反対咬合が自然に治るのは実際にはかなりの少数です。噛み合せが反対になっている下の前歯が5~6本ある・逆の噛み合わせが深い・近親に反対咬合の人がいるなどの場合は、残念ながら、自然に治る可能性は、極めて少ないと考えて良いでしょう。
受け口の患者さんのうち多くの方に、早期初期治療が必要と考えています。 成長がすすみ、骨格(顎関係)のゆがみが大きくなる前の乳歯列の時期に、まず逆の噛み合わせを治しておこうというのが「早期初期治療」の考え方です。逆の噛み合わせは上顎の成長を阻害し下顎の成長を促進すると考えられているからです。(個々の患者さんによって症状が異なるため、治療方法は変わることがあります。)
【症例 4232 】 3歳女児:乳歯列の反対咬合 (噛み合わせ調整・観察)
【 症例1475 】 6歳女児 乳歯列の反対咬合 (切歯斜面版)
【 症例4430 】 6歳女児 右上中切歯の反対咬合 (切歯斜面版・上顎前歯の部分矯正)
それに伴い、『ムーシールド』という装置が開発されました。これは非常にシンプルな矯正歯科装置で、3歳からでも使用出来る装置です。 ムーシールドはご自分で取り外しの出来る矯正歯科装置(マウスピースのようなもの)です。受け口の前歯を改善する目的で使用されます。通院は1~2ヶ月に1回で、きちんと正しい使い方をしていただくことで効果が現れてきます。 (ただし、 ムーシールドはどんな症例にも効果があるわけではありません。) 早めに対処することで、受け口はかなり改善することができますので、遺伝のあるなしに関わらず、反対咬合のある方は、早めに歯科を受診されることをお勧めします。