歯をぶつけた後、グラグラ揺れて痛い。
すぐに来院してください
小さいお子さんが転んでしまったりふざけて顔をぶつけてしまい、乳歯や生えてきたばかりの永久歯が ぐらぐらしてしまうことが よくあります。外傷により歯冠(歯の頭の部分)が割れたり折れたりしていなくても、「歯が動いている」「歯の向きが変わった」「歯の位置が変わった」などの症状がある場合、歯が抜けかかっていたり、根が折れている可能性があります。歯が抜けかかって(抜けてしまって)いても、適切な処置をすることによって抜いたり矯正したり大掛かりな治療をせずに済む場合が多くあります。歯を助けるためにも、歯をぶつけてしまったら、できるだけ早く歯医者さんに行って適切な処置を受けましょう。
大丈夫だと思っても歯医者さんへ。
ケガをした直後は大丈夫だと思っても、後日歯のヒビや根が割れてしまっていることがわかることがあります。 また、歯の位置が動いてずれたままにしていると、そのまま固まってしまったり最悪な場合は抜け落ちてしまうこともあります。乳歯の場合は、生え変わりに影響することもあります。実際はそんなに心配しなくてもよい事も多いのですが、レントゲンをとって歯の状態を確認するなどしっかりと精査されるのがよいでしょう。
◆診断
歯は揺れているものの元の位置にとどまっている場合を亜脱臼(あだっきゅう)、歯の位置が動いた場合を脱臼(だっきゅう)と呼んでいます。脱臼は歯が動いた方向により、挺出(上方へ)、埋入(下方へ)、転位(水平へ)に分けられます。固定などの処置が必要な場合があり、根の折れてしまい揺れている場合は抜歯しなければならない場合もありますので、早期に歯科医院を受診して精査する必要があります。
◆歯をぶつけた場合の治療法
(1)歯の打撲(だぼく)
歯をぶつけた時など、歯や歯槽骨(しそうこつ)に目立った外傷もなく、単に一時的に歯根膜(しこんまく)の炎症のみをおこした場合をいいます。歯の揺れはみられず、歯周組織への障害もわずかです。
【治療】
エックス線写真で歯根や歯槽骨(しそうこつ)に異常が無いか歯科医院で確認が必要です。単なる外傷性歯根膜炎の場合が多いので、硬いものを噛まないなど安静にしていると、数日から1~2週間でおさまってきます。多くの場合、痛みを伴うため消炎鎮痛薬(痛み止め)を必要とします。
(2)歯の亜脱臼(あだっきゅう)
完全に歯が抜けないで、「歯が揺れる」 「歯の位置がずれる」 などの症状がある場合を 『亜脱臼:あだっきゅう』 と言います。歯の位置変化はないものの、外傷により 歯が少し抜けかかったもので、歯根膜の一部が断裂して歯が揺れているため、さわると強い痛みがあります。
【治療】
揺れが大きい場合や噛むと痛んで食事がうまくとれないような場合は、まず最初に行うべき処置は 『歯の固定』 です。ゆれてしまった歯を健康な両隣の歯と添え木のような物(ワイヤーや接着性レジン)を接着させて、歯を2~3週間固定して安静にする必要があります。固定することで周囲の炎症も緩和して回復してきます。歯の周囲から出血しているようであれば、感染を予防するために抗生剤の投与が必要になることもあります。
固定期間中は歯を安静にすること、清潔に保つことが大切です。外傷で傷んだ歯周組織の回復には、歯垢付着による歯肉の炎症を極力避ける必要があります。処置直後はうがい薬を使用し、腫れ・傷などが治まってきたら、柔らか目の歯ブラシを用いて、歯の固定装置直下の汚れ、歯と歯の間の汚れなどを、いつもより時間をかけて清掃してください。
歯根のまわりの歯根膜への血流障害はほとんどありませんが、歯根の先端で歯髄(しずい)への血液供給の役割を担う「血管」が切れて、後に神経が死んでしまう可能性あり、長期の経過観察を必要とします。
歯の内部に根の先から神経や血管が入り込んでいるため、根の先がズレてしまうと血管などが傷ついてしまって、歯髄(歯の神経)が炎症を起こすこともあるので、極端に熱いもの、冷たいものを避け、その周囲を使わないように注意する必要があります。中の歯髄(歯の神経)が死んでいると、早ければぶつけてから数週間程度で歯自体が暗い色に歯が変色してきます。中の神経が死んでいるかどうかの見極めは、「電気歯髄診」等の検査機器を用いて判断しますが、ぶつけた直後は神経が生きていても反応が鈍くなっておりますので、慎重な判断が必要です。神経を取り除き、いわゆる「根の治療」=根管治療が適切に行われることです。歯髄が死んでいても、その後の根管治療がちゃんとなされれば、特に大きな支障はなく使えますのでご安心ください。
(3)歯の完全脱臼(かんぜんだっきゅう)
歯が歯槽骨(しそうこつ)から完全に抜けて歯根膜が断裂した状態 をいいます。転倒しやすい幼児や学童の外傷では しばしばみられます。また、歯の状態が悪く、歯を残すのが困難なことが あります。前歯がないと、見た目も悪く、言葉や食べることに影響がでます。このような場合の治療としては、永久歯では一般的に入れ歯、ブリッジ、インプラントなどの治療法などがあげられ、咬み合せの状態に合わせて選ぶ必要があります。子供(乳歯)の場合、乳歯がなくなると、後から生えてくる永久歯の歯並びや言葉、食べ方などに影響することも考えられ、適切な対処が望まれます。
【治療】
不幸にして歯が完全脱臼しても、すぐに手当てをすれば歯を助けることができます。抜けてしまった歯の状態がよければ、元の骨の穴(抜歯窩)に戻す(再植する)ことにより、歯は再び機能を回復して使うことができるようになります。また、歯の根っこの先が、まだ完成していない歯であれば、再植後に神経が生き返ることがあります。歯根膜は乾燥に弱く、口の外では、およそ30分くらいしか生きていることができません。したがって、乾燥させないように、歯が抜けてから30分以内に歯医者さんに元に戻してもらうことが重要です。
→ 詳しくは「歯が抜けてしまった場合、どのような対応」を参照